あの夜の風は、春の終わりにしてはひどく生ぬるく、湿気を含んで肌を撫でた。
午後9時を過ぎた頃、バイト先の裏口を出た私は、スマホに届いていた「ついたよ」という彼のメッセージを見ながら、自然と早足になっていた。
待ち合わせたのは、公園の端。
夜になると街灯もほとんど灯らない、ちょっとした森のような場所。
結婚してから足を踏み入れることなんてなかった場所。
でも、私の胸の奥には、ずっと棲みついていた場所でもある──彼と、あの頃、たくさんキスをした、木の陰。
そこに、彼──Mがいた。
姿を見た瞬間、胸がぎゅっと締め付けられるように痛くなった。
「久しぶり」
「……ほんとに、久しぶり」
言葉にすればそれだけだった。
だけど、次の瞬間、私は強く抱きしめられていた。
彼の胸に顔を押しつけられ、その体温に、過去が一気に蘇ってくる。
心臓の音が、彼にも伝わっている気がした。
「お願い……したい」
その言葉を、耳元で、ささやくように、彼は言った。
息がかかるたびに、肌の奥が震えた。
「だめ……もうそんな関係じゃないんだから」
理性で答える。でも、身体が動かない。逃げられない。
逃げたくない。
「お願い……今でも好きだし、ユミだって……違う?」
彼の唇が、私の耳たぶをやさしく噛んだ。
その瞬間、堰が切れたように、私は息を呑み、身体が火照るのを止められなかった。
心の奥で押し殺してきた渇きが、あっという間に全身を濡らしていく。
「……いいよ」
その言葉は、驚くほど自然に、私の唇からこぼれた。
彼はすぐさま、私のジャンパーの前を開け、シャツのボタンに手をかけた。
パチ、パチ……と、夜の静寂に、布の音がくぐもって響く。
下着なんて、つけていなかった。
もしかして、こんなことになるんじゃないかって、どこかで期待していた私がいた。
彼の手が私の胸に触れた瞬間──全身がしびれた。
冷たいはずの指先が、肌に触れたとたん熱を帯びる。
彼は私の乳首を弄びながら、口を開けて舌を這わせた。
濡れた舌先が胸の尖端を包み、吸われ、噛まれるたびに、声を我慢できなかった。
「ん……あっ……や、だめ……こんなとこ……」
言いながらも、身体は正直だった。
彼の指が、スカートの裾をたくし上げ、太ももをなぞりながらショーツをずらしていく。
その一連の動作に、私は自ら腰を浮かせていた。
そう、脱がせやすいように……。
彼の手が、私の濡れた中心に触れた瞬間、もう隠しようがなかった。
「もう、濡れてるじゃん……」
囁きながら、彼の指は私の秘裂をなぞり、粘膜の間に滑り込んでくる。
とろ、とろと音がするほど濡れていた私。
いやらしい音が、誰もいないはずの公園に、甘く響いた。
「こっち向いて。木に手をついて──」
彼の命令に、私は逆らわなかった。
背中を向け、木の幹に両手をついた。
そして、自分からお尻を突き出す。
スカートがめくれたまま、ショーツは足首に引っかかったまま。
彼の熱いものが、私の後ろから触れてきて、そして……押し込まれてきた。
「ああっ……!!」
衝撃と歓喜が同時に突き抜ける。
立ちバックという体勢のまま、彼は私を激しく突いてくる。
夜の公園──誰に見られるかわからない場所で、私は喘ぎ、声を殺しきれずにいた。
「やばい……もう、出る……」
「中は……ダメ……っ」
でも、彼の言葉は、警告ではなかった。
もう、出てしまっていた。
熱いものが、私の奥に、びゅくっ、びゅくっと注がれていく。
ピクピクと痙攣する彼のものが、私の中で生きていた。
「また……しちゃったね」
彼がそう呟いたとき、私は彼の身体からゆっくり抜けて、しゃがみ込み、彼の股間に顔を寄せた。
もう一度、満たしてほしかったから。
彼のモノを口に含み、ゆっくり、じっくり、舌で味わうようにしゃぶっていく。
「ユミ……ほんと、やばいって……」
嬉しかった。求められること。
繋がっていなくても、心はずっと、重なっていた。
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