女子大生家庭教師が出会った3人の少年──忘れられない、春の情熱体験

第一章:沈黙の中の震え ── 悠人

大学3年の春、桜が舞う並木道を、自転車で駆け抜ける午後。
私は三つの家庭教師先を掛け持ちしていた。
どの家庭も、それぞれの事情と期待を背負って私を迎えてくれる。
でも──たぶん、本当の意味で「選ばれていた」のは、私の方だった。

火曜と金曜の夕方、17時きっかり。
一軒家の裏にある、まるで時代から取り残されたような静かな書斎。
磨かれた木の机と、背の高い本棚に囲まれて、
彼──悠人くんは、今日も私を待っていた。

扉をノックすると、ほんの一瞬の間があってから「どうぞ」と小さな声。
開けた先にあるのは、まるで図書館のような静謐な空気と、緊張で少し張りつめた彼の横顔。

「こんばんは、悠人くん。今日も、よろしくね」

「……はい」

彼は立ち上がることも、目を合わせることもなく、ノートを開いたまま頷いた。
それでも、私は慣れていた。悠人くんは、そういう子だ。
物腰は丁寧で、いつもきちんとした服装。声も、礼儀も、完璧な優等生。

けれど──
彼の視線が、ほんの少しだけ私の胸元で止まったこと。
私の脚が、組み替えられる瞬間だけ、ページをめくる手が止まること。
私は、気づいていた。

「この問題、やってみようか」
私は彼の隣に腰を下ろし、ノートに指を滑らせる。
その指先が彼の手の甲にわずかに触れた瞬間──
彼の肩が小さく震えた。

私の視界の端で、彼の喉が、ごくりと動く。
視線はノートに向いているふりをして、実は私の呼吸を追っている。

わざと、声のトーンを少しだけ落とす。

「ここね……ちょっと難しいかもしれないけど、大丈夫。私がついてるから」

その言葉は、彼の緊張を溶かすためのものだった。
けれど、その声音が、彼の何かをくすぐってしまったのだろう。
彼はペンを落とした。拾おうとして、手が私の膝に触れる。

「ごめ……なさい……っ」

彼は顔を真っ赤にして後ずさった。
その姿に、私は不意に心が疼いた。

可愛い。
そう、思ってしまった。
理性と欲望のあいだで懸命に足掻いている、その不器用さが。

「ねえ、悠人くん」

私は笑顔のまま、そっと彼の手を取った。
指が細くて、熱くて、すでに汗ばんでいる。
少年の体温が、私の指先にじんわりと移る。

「緊張してる?」

彼は驚いたように私の目を見つめた。
それはまるで、見つかってはいけない想いを覗かれたときのまなざしだった。

「……だって、そんなに手が熱いんだもの」

私はささやきながら、彼の手を自分の太ももへと導いた。
柔らかなスカートの布越しに、彼の指が乗る。
その瞬間、彼は何かに触れてしまったような表情をして、動けなくなった。

「……触れてみる?」

私の問いかけは、甘く、深く、どこか試すように響いた。
彼は答えられなかった。ただ、かすかに頷いた。
そのとき、私はもう──教師ではなかった。

私は、そっと彼の唇にキスをした。
緊張で強張ったその唇は、でも触れた途端に、
ゆっくりと溶けていくように柔らかくなっていった。

彼の手が私の腰に回る。震えながら、でも確かに、私を求めて。
私の指先が、彼のシャツのボタンをひとつずつ外していく。
薄く透ける肌、まだ見慣れていない女の身体に、目を逸らしながらも惹かれていく彼。

「怖くない?」

そう訊くと、彼は首を振った。

「……ずっと、夢だったから……」

その言葉を聞いた瞬間、私の心の奥で、何かが柔らかく弾けた。
私は静かに頷き、自分のブラウスを脱ぎはじめた。

彼はただ、見つめていた。
目を逸らさず、私の身体を、まるで神聖なもののように。

そして──私は、彼の身体を迎え入れた。

私が彼を迎え入れたとき──
まるで静かな湖面に、そっと石を落としたようだった。
音はなかった。ただ、内側からひとしずく、熱が満ちてくるのを感じた。

悠人くんの指先は、私の太ももをなぞりながら、恐る恐るスカートの奥へ。
その手つきは不器用で、ぎこちなくて、それでも真剣だった。
まるで聖域に触れるように、彼の手が震えていたのが、肌越しに伝わってくる。

私はそっと彼の耳元で囁いた。

「……力、抜いていいのよ」

「……はい」

掠れた返事。
けれど、私の腰に添えられた彼の手に、ほんの少しだけ力が入った。
まだ慣れない手つきで、私の下着を指先でそっとずらしていく。
空気が、熱くなる。

私はベッドの上に横になり、彼を見上げた。
白く、細い首元。額に滲む汗。瞳は、迷いと決意を抱えたまま私を見つめている。

私は太ももをゆっくりと開き、彼を招き入れた。
「いいよ、来て」
その一言が、彼を突き動かした。

彼はゆっくりと、自分の身体を私の上に重ねた。
私の胸に頬を寄せながら、呼吸が早くなるのが分かる。
腰のあたりで、彼の昂りがはっきりと私に触れていた。

「……入れていい?」

その声は、震えていたけれど、どこかで覚悟を決めた男の声だった。

「うん……怖くないよ」

私は自らの手で、彼の腰をゆっくりと導いた。
濡れそぼった私の奥に、彼の熱が触れた瞬間──
私は、思わず息を止めた。

初めての彼のものは、思った以上に硬く、まっすぐだった。
一度、小さく震えてから、彼は浅く押し込んだ。
まだ入り口。けれど、その圧力だけで、私は背筋を震わせた。

「……せんせ……」

「……大丈夫。ゆっくりでいいよ」

彼は、息を整えながら、もう一度。
ゆっくりと──少しずつ、私の中へ。

押し広げられる感覚。
久しぶりに“初めて”の感覚を思い出す。
最初の痛みでも、乱れでもない。
ただ純粋な、“異物”が身体の奥に触れていく感覚。

「あ……っ……」

思わず漏れた私の吐息に、彼の腰が止まった。
私を傷つけたかと、彼の目が揺れる。

「大丈夫……感じただけ」

私は笑った。
その笑みに安心したのか、彼はもう一度、ゆっくりと、深く差し込んできた。

完全に、繋がった。

私の中に彼が収まりきったとき、彼の身体は汗にまみれ、呼吸も浅くなっていた。
でも、それ以上に──彼の瞳が、私を見つめていた。
まるで「ここにいてくれて、ありがとう」と言うように。

「悠人くん……そのまま、少し動いてみて」

「……はい」

彼の腰が、ゆっくりと、浅く引かれて、また押し込まれる。
その動きに、私は身体の奥が押し上げられるような感覚を覚えた。

何度か繰り返すうちに、彼の腰の動きにリズムが生まれた。
硬さ、熱さ、若さの衝動。
それが、私の内側を何度も叩くたびに、
私は女の悦びを思い出す。

「せんせい……中……あったかい……」

「うん……あなたの熱が、ちゃんと届いてる……」

私は彼の頬に触れ、唇を重ねた。
彼の動きは次第に早く、深く、強くなっていく。

私は受け止めながら、内側がひくひくと痙攣するのを感じていた。
まだ未熟で、でも必死な彼の動きに、私は自分の快感さえ預け始めていた。

「……もう……っ、出そう、です……っ」

彼の声がかすれ、私は抱き寄せながら囁いた。

「……中で、いいよ」

その一言が、彼のリミッターを完全に外した。

数度の深い挿入ののち、彼の身体が震え、
熱いものが、私の奥に一気に注ぎ込まれた。

「あっ……悠人くん……っ……」

彼の絶頂と同時に、私もまた震えた。
快感というよりも、満たされたという感覚。
“誰かに求められている”という感覚が、心と身体の深いところで私を包んだ。

彼は私の上に伏せたまま、荒く息を吐きながら、小さく呟いた。

「……好きです……ずっと……好きでした……」

私は、そっとその髪を撫でながら、胸の中で何かが溶けていくのを感じていた。

──教えること。
それは、正解を与えることじゃない。
誰かの“はじめて”を、共に震えて、受け止めること。
私が欲していたのは、彼に教える悦び以上に、
“誰かの記憶の中に、刻まれること”だったのかもしれない。

私は教師であり、女であり、そして──彼の記憶の最初の人になった。

その事実が、なぜか切なく、そしてたまらなく甘く、
私は彼を抱きしめながら、目を閉じた。

──悠人の章、完。

第二章:火照りと逆光 ── 蒼真(冒頭から再構成)

土曜の午後、少し早めに家を出た私は、駅前の本屋で蒼真くんの苦手な英文法の参考書を一冊選んだ。
厚すぎず、でも要点が丁寧にまとまっていて──彼が飽きずに読み進められるように。
そんなことを考えている自分に、ふと笑ってしまう。

私は大学3年。
文学部で教育課程を履修していて、教えることには人一倍、責任を感じているつもりだった。
特に、年下の子たちに勉強を教えるときは、「きちんとした大人でいなきゃ」と何度も自分に言い聞かせていた。

でも──
蒼真くんに対してだけ、心の奥で、ほんの少しだけ違う感情が芽吹いていることに、私は気づいていた。

彼の家に着いたとき、まだチャイムを押す前から、ドアの向こうで足音が近づいてくる音がした。
扉が開くと、蒼真くんはジャージ姿のまま、額に汗を浮かべて笑った。

「先生、今日もよろしくお願いしますっ」

まぶしいくらいに明るいその笑顔。
部活帰りの火照った頬と、ちょっと乱れた髪。
あまりに無防備で、少年そのものだった。

「こんにちは。汗、拭いた方がいいんじゃない?」

そう言ってタオルを差し出すと、
「先生、やっぱ優しいなぁ」
と、彼は照れくさそうに笑いながらタオルを受け取った。

教科書を広げて並んで座る。
今日は過去完了の用法を教えるつもりだった。
でも、彼の視線がどこか落ち着かない。
ちらりと私の手元を見ているかと思えば、少し目線が下に落ちる。

──わかってる。
私の胸元を意識しているのだ。
前屈みになるたび、シャツのボタンの隙間から見える影に。

私はわざとらしく直すことも、咎めることもせず、そっと髪をかき上げて微笑んだ。

教える、という行為の中で、
“視線”という名の言葉にならないやりとりが生まれる瞬間がある。
蒼真くんはまさにその真ん中にいた。

「先生ってさ、絶対彼氏いると思ってた」

ふいに、蒼真くんがつぶやく。
プリントを指差していた手が止まり、私は目を瞬いた。

「え? どうして?」

「だって……キレイだし、優しいし、なんか……女の人って感じする」

不意打ちだった。
「女の人」──その言い方に、私は胸の奥をそっと撫でられたような感覚を覚えた。

それは“教師”としての私ではなく、
“ひとりの女性”として見られたということ。

心のどこかが、じんわりと熱を帯びていく。

「彼氏、いないの?」

「うん。今は、いないよ」

そう答えると、彼の瞳がわずかに揺れた。
その反応が、なぜか可愛くて──私はほんの少しだけ、意地悪な気持ちになる。

「意外? そんなにモテなさそうに見える?」

「……いや、逆。……でも、先生がフリーだって思うと、ちょっとドキドキする」

そう言ったときの彼の声は、思った以上に真剣だった。

ドキドキするのは、私のほうだよ──
そう胸の中で思いながらも、私は笑顔を保ったまま、教科書に視線を戻した。

でももう、英文法なんて、頭に入ってこなかった。

蒼真くんの存在が、部屋の空気を少しずつ変えていく。

その体温と匂いと、視線と、若さの濁流が、
私の中の“女”の感覚を静かに、でも確実に呼び起こしていく。

──私、今、危ういところに立ってる。

でもその“きわ”にこそ、自分が息づいている気がしてならなかった。

「先生……」

彼の声が、いつもより少しだけ低く、震えて聞こえた。
夕方の光が、部屋の空気を金色に染めていた。
二人きりの静けさに、心臓の鼓動だけがやけに大きく響いている。

私は背筋をすっと伸ばしたまま、彼の視線を受け止めていた。
その眼差しは、まるで祈るように真剣で──でも、何かを求める熱を隠しきれていなかった。

「……触れても、いい?」

彼の言葉は、息を飲むほど真っ直ぐだった。

私は、一瞬だけまぶたを閉じてから、小さく頷いた。

「ええ……いいわよ」

その瞬間、蒼真の手がそっと伸びてきた。
ぎこちなく、でも大切なものを扱うように、
彼の指先が、私の手の甲にふれた。

それは、ただの“接触”ではなかった。
そこに宿る熱は、まるで初めて火を知った少年のようで、
触れた指先から、静かに私の皮膚が呼吸を始めるのがわかった。

「……あったかい」

彼がぽつりと呟く。
私は何も言わず、彼の手をそっと包み返した。

「ねえ……こっちにも、触れてみる?」

私は、スカートの裾をすこしだけ持ち上げて、太ももの内側をちらりと見せた。
その肌が日差しを受けて、ほんのりと透ける。
彼の喉が、ごくんと鳴った音が聞こえた。

「……いいの?」

「ええ。でも、優しくね」

彼は小さく頷き、そして、震える手のひらを私の脚へとそっと滑らせた。

その瞬間──
私は、息を吸うのを忘れた。

彼の指が、私の太ももの柔らかい内側をなぞる。
指先が、驚くほど丁寧に、肌の上をゆっくりと描いていく。

「……すごく、柔らかい……」

私は笑った。

「それが女の人の身体なの。……怖い?」

「怖くは、ない。でも……こんなにきれいだなんて、思わなかった」

その言葉に、胸の奥がふるりと震えた。

褒められたからじゃない。
私の“身体”を、初めて誰かが、ちゃんと“目で見てくれた”から。
ただの視線じゃない。
触れて、感じて、そのまま、言葉にしてくれたから。

彼の指が、ゆっくりとスカートの奥へと進む。
ショーツの縁に、指先がそっと触れる。

私は脚をわずかに開き、身体を預けるように後ろへ倒れた。

「蒼真くん……もう少し奥まで、触れてみて」

「……うん」

ためらいながら、でもしっかりと。
彼の指は、布の内側へと滑り込む。
私の下着の中に入ってきた指先が、じわりと私の中心に近づいてくる。

「あっ……」

思わず、声が漏れた。
彼の指が、柔らかく私の秘めた場所に触れたのだ。
濡れてしまっていた。
きっと、彼にもそれがわかったはず。
でも彼は、何も言わず、そっと、私の中心をなぞった。

「……ここ、先生の……?」

「ええ……あなたにだけ、見せてる」

その言葉に、彼の指がほんの少しだけ強く押し込まれた。
身体がびくりと震える。

私は目を閉じ、指先の動きを受け入れた。
彼の手はまだ拙い。けれど、その不器用さに、私は妙な安心を感じていた。

少女のような羞恥と、女の官能とが混じる。
理性と快楽の狭間で、私は自分を手放していた。

「もっと、奥まで……入ってきて」

そのときの私の声は、彼にとって“許し”だったと思う。
彼の指が、私の中にそっと入り込んできた。
熱く、濡れた粘膜の中で、彼の指が震えていた。

「あ……っ、蒼真くん……」

私の腰が、勝手に揺れていた。
内側を這う指の動きに、理性が削がれていく。
私は、まるで初めての少女のように、
彼の手のひらに“女としての私”をゆだねていた。

そして、私は確信した。

この夜を境に──私は、もう教師ではいられない。
この指先を知ってしまった私を、もう誰も、止めることなんてできない。

蒼真くんの指が私の中から離れたとき、
そこに残った空洞感は、次に満たされるものを直感させた。
彼の熱を知った私の身体は、もうそれを拒める状態ではなかった。

私は静かに仰向けになり、スカートをたくし上げ、
腿を少し開いた状態でベッドに横たわった。
脚を揃えたままのその姿勢に、自分でも驚くほどの羞恥と、
それを超えるほどの期待が混じっていた。

シャツの胸元をゆっくりと開きながら、私は目を伏せる。
肌に落ちる蒼真くんの視線が、私の心をじんわりと染めていく。

「……ほんとうに、いいの?」

彼の声は、まるで息を呑むように震えていた。

私は顔を少し傾けて微笑んだ。
頬に触れ、唇のすぐ近くで、静かに囁く。

「ええ……初めてを、私にちょうだい」

彼の腰が、そっと私のあいだに沈み込む。
若く、まっすぐな昂ぶりが、私の秘部の入口に触れる。
その瞬間、胸の奥がふるりと震えた。
身体が、彼を迎えるために自然と開いていく。

「……あ……っ」

ぐっと押し込まれたとき、思わず声が漏れる。
痛みはない。
けれど、押し広げられる感覚があまりにも生々しくて──
私の中の何かが、確かに“満たされて”いくのがわかった。

「せんせい……きつい……けど……すごく、気持ちいい……」

掠れた声。
私は彼の背中を抱き寄せながら、息をつきながら応える。

「大丈夫よ……ちゃんと、入ってきてる……」

彼の腰が、ゆっくりと前後に動きはじめる。
最初は遠慮がちに、でも確かに。

そのたびに、私の中がくちゅりと音を立て、
蒼真の熱を締めつけてしまう。

恥ずかしさと快感が交錯して、
私は自分でも制御できないほど、深く、深く感じていた。

「……せんせい、もう……すぐ、出そう……っ」

彼の言葉に、私は首を振らず、ただ抱き締めた。
耳元に唇を寄せ、甘く囁く。

「いいの……全部、出して。……私の中に、残して」

その一言が、彼のすべての理性を溶かした。

蒼真の腰が深く沈み、
次の瞬間──

「うあっ……っ……!」

彼の身体が震え、熱が私の中に迸った。
じゅわ、と音が聞こえるほど、
一気に注ぎ込まれる彼の“命”の気配が、身体の奥に広がっていく。

私の中が、その熱に包まれて、優しく痙攣する。

「せんせい……っ……中、すごい、あったかい……っ……」

「ええ……あなたを全部、ちゃんと受け止めてるわ」

私はそう囁きながら、彼の額にキスを落とした。

清楚に生きてきたつもりだった。
自分は“教える側”でいようと、ずっと心を張っていた。
でも今──
彼のこの瞬間を受け入れることで、
私は初めて“与える悦び”と、“赦される快感”に目覚めていた。

身体を満たす熱だけじゃない。
心の奥が、ほろほろと緩んでいく。
優しくて、深くて、甘やかで、どこか悲しいような、
そんな“幸福の正体”を、私はいま確かに味わっていた。

──その夜、私は一人の少年の“最初の女”になった。
そしてそれは、私にとっても、もう戻れない女の始まりだった。

第三章:翔太 ── 純白の奥に眠るもの

日曜の夕暮れ。
団地の階段をのぼるたび、私は少しずつ心の衣を脱いでいくような気がしていた。

他の誰の前でも、私は「教える人間」でいようと努めていたけれど、
翔太くんの前では、不思議と“きちんとした私”ではいられなくなるのだった。

彼の部屋の前に立つと、いつもよりゆっくりとチャイムを鳴らした。
小さな音に応えるように、扉が静かに開く。

「こんにちは、先生……」

やわらかく、少しだけ緊張を帯びた声。
翔太くんは今日も、白いシャツの襟元をきちんと正し、髪の一房も乱れていなかった。
それがかえって、私の心をざわつかせる。

「こんにちは。……今日も、お部屋、きれいね」

「……はい。先生が来るから、ちゃんとしました」

彼はそう言って、目を合わせることなく、さっと後ろを向いた。
私はそっと靴を脱ぎ、彼の部屋へと上がる。

机の上には、きれいにそろったノートと筆記用具。
そしてその横に、可憐な青い花が一輪、小さなグラスに挿してあった。

「……これ、あなたが?」

「……はい。母が昨日、道端で摘んで……でも、先生に見せたくて」

そう言って差し出された花に、私は息を呑んだ。

翔太くんは、恋を知らない。
だけど、それよりも深い“想い”の形を、
たぶん誰よりもまっすぐに抱いている。

私はその純白の好意に触れ、
自分の奥でなにかが、静かに揺れていくのを感じていた。

「今日は、英語よりも……先生の話、聞きたいです」

「私の?」

彼は頷いた。けれどすぐに、少しだけ顔を伏せて付け加えた。

「……最近、勉強よりも、先生の声の方が……ずっと、心に残ってしまって」

その告白に、私は言葉を失った。

きれいごとでも、からかいでもない。
彼の声は、ただ静かに、真っ直ぐに私の胸の奥に届いてきた。

──そう。
この子の前では、私は“教える”ことしかできないと思っていた。
でもいま、私は、“受け取る”側になっていた。

それが、少し怖くて。
でも、どこか、甘くて。
私は自然と、目を細めて微笑んでいた。

「翔太くん……少し、近くに来てくれる?」

彼は、戸惑いながらも頷いて、私の隣に腰を下ろした。
ほんのわずかな距離が、やけに愛しく感じられる。
私は、彼の指先にそっと触れた。

「前に……キス、したでしょう?」

「……はい。ずっと……忘れられなかったです」

「……私もよ」

彼の指が、わずかに震える。
その震えが、まるで心臓の鼓動のように伝わってきて、
私の中で、何かがひとつ溶けた。

私は、そっと唇を寄せた。
彼の呼吸が浅くなり、次の瞬間──
とても静かに、ふたりの唇がふれあった。

それは、熱くも濡れてもいなかった。
ただ、まっすぐで、優しくて。
まるで“この瞬間のために生まれた”みたいな、柔らかなキスだった。

私は目を閉じて、言葉にならない想いをそのまま唇に託した。
そして、ゆっくりと、身体を傾けていく。

頬と頬が触れ合い、指と指がからみ合い、
やがて、身体の熱が肌を透かして交じり始める。

──翔太くん。
あなたに触れられることで、私は今、“女”になっていく。

でもそれは、なにかを捨てることじゃない。
むしろ、ずっと守ってきた“清らかさ”が初めて解かれていくような──
そんな、優しい夜の予感だった。

キスの余韻に浸る間もなく、
私は自分の胸の鼓動が、彼の手のひらに伝わるほど高鳴っていることに気づいていた。

彼の指先が、遠慮がちに私の手に触れ、
そこからまるで迷子になったように、そっと私の腕、肩、鎖骨へと旅してくる。

私は静かに目を閉じ、すべてをゆだねる。

翔太くんの手は、まだ震えていた。
でも、その震えに私は心から安心していた。

不慣れな手つき。
けれど、誰よりも真剣で、
“私という存在”に全身で向き合おうとする純粋な気配に、
身体の奥が、やさしく疼いていく。

「……触れて、いい?」

小さな声。
まるで祈るようなその問いかけに、私は頷いた。

「ええ……優しく、してね」

彼の手が、ブラウスのボタンをひとつずつ、慎重に外していく。
白い下着があらわになると、彼は一度だけ息を呑んで、
そのまま、そっと指先で、私の胸の輪郭をなぞった。

「すごく……綺麗です……」

「……ありがとう。そんなふうに見てもらえると……自信、湧いてくるわ」

羞恥と悦びが、言葉に混ざる。
私はその言葉に、自分でも驚くほどの“女”の声を感じていた。

下着をそっと脱がされ、肌が空気に晒されたとき、
私は“見られている”ことの快感に目覚めていく。

そして、彼の唇が、震えながら私の乳房に触れる。

一度、二度。
優しく、確かに。
愛しさを込めるように吸いつく感触に、
私の指先が、無意識にベッドシーツを握りしめた。

「……下も、脱がせていいですか」

その言葉の敬語が、愛しかった。
私は頷き、スカートをたくし上げて、彼に許した。

彼の手が、下着の布地をそっとずらす。
そして、その奥にある私の“ひみつ”へと、指がそろりと辿り着く。

「あっ……」

私の口から、小さな吐息が漏れた。

そこはすでに、彼の指を迎える準備を整えていた。
翔太くんが初めて触れる“女のぬくもり”。
その感触に、彼の喉が、ごくんと鳴る。

「……熱い……すごい、濡れてる……」

「あなたのせいよ」

私は、静かに笑った。

彼の指先が、奥へと進む。
少しずつ、私の中を探るように動く。

その動きは拙くて、それでも確かに“私”を知ろうとしていた。

「……翔太くん、もう……いいのよ。来て」

私は脚を開いて、彼の身体を迎え入れる体勢を取る。
彼は、上気した頬のまま、頷いて、自分の下半身を露わにした。

まっすぐに立った彼の昂ぶりが、
どこか頼りなくも強くて──愛しかった。

彼の身体が、そっと私に重なる。

肌と肌が重なり、
呼吸が混じり、
心の鼓動と鼓動がひとつのリズムになっていく。

彼の昂ぶりが、私の入口に触れたとき、
私は軽く息を吸い込んだ。

「ゆっくり……ね」

「……うん……」

彼の腰が、ゆっくりと前に押し出される。
私の中が、柔らかく押し広げられていく。

「あ……っ……」

喉の奥から漏れた声。
それは痛みではなく、異物が深く侵入してくる悦びに似たざわめきだった。

彼の動きが止まる。
私の様子をうかがうように、顔を覗き込んできた。

「せんせい……入ってる……?」

「ええ……あなたのが、ちゃんと、入ってきてる」

私は手を伸ばして、彼の背を撫でた。
安心させるように、そして導くように。

彼は小さく頷き、再び、ゆっくりと腰を動かし始めた。

その動きはまだ拙くて、ぎこちない。
けれど、私の内側をノックするたびに、
身体の奥がきゅん、と締まる。

「すごい……せんせいの中……ぬくくて……」

「……あなたを、全部包んでるの。初めてのあなたを、私が……」

そう口にした瞬間、
私は不思議な感情に襲われた。

愛しさ、優越感、幸福、そして……どこか、満たされた“許し”のような感覚。

彼を受け入れることで、
私は「自分自身の過去」までも赦しているような気がした。

「……先生……もう、止まらない……出そう……っ」

私は頷いて、彼を抱きしめる。

「いいの。……私の中に、全部出して」

次の瞬間、彼の身体が震え、
深く、深く突き入れたまま──

「せんせい……っ!」

彼の中から一気にあふれる熱を、
私は、身体の底で静かに受け止めていた。

身体も、心も、深く結びついたその瞬間──
私は、誰よりも“清らかに穢された女”として、
はじめて本当の意味で、ひとりの人間に“抱かれた”気がした。

──翔太との夜。
それは静かで、やさしくて、でもたしかに私の“底”を震わせた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました